悲しいけど面白いもの
伊集院光、深夜の馬鹿力 テリー・ギリアムへインタビュー
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I:最後に・・・僕の番組にリスナーから色んなハガキがくるのだけれども、その中で「面白いハガキを読むよ」「悲しいハガキを読むよ」みたいな分類のできないヤツが凄い好きで。この間きたのは・・・自分の凄い尊敬してたお爺ちゃんで、物凄い厳しい人で。いつも怒ってばっかりいたお爺ちゃんのお葬式の時に、凄い悲しかったんだけれど最後に挨拶するのに棺の顔のところを開けたら、そのお爺ちゃんが死んでるから口をパカーンと開けて白目をむいて、鼻を垂らしてる。それが世の中のなかで、一番楽しかったことで、一番悲しかったことだ。で、その時同居してて親に怒られてその時以来、こういうときに笑うことはおかしいのだって、こういうときに面白いって感じることもおかしいことだって自分は思ってるんだけど、っていうようなのが来て。そのハガキを僕はどういうコーナーで読んでいいのかわからないんだけど、最近来たハガキの中で一番好きなんだけど。テリー・ギリアム監督の話を聞いて・・・あれが面白くていいんですよね。
T:そうだよ。そのハガキと同じようなことが自分にもあったんだ。かみさんのお父さんの葬式が大失敗でね。カーテンは閉まらない、棺おけの花瓶が落ちる、厳粛な瞬間なのに何もかもうまくいかない。もう妻と二人で笑った笑った。で、かみさんのお姉さんに怒られた。でもあまりに面白くてどうしようもなかったんだ。僕は面白いのと悲しいの、どっちがどっちだかわからなくなる時があるんだ。皆はそこで笑うことで人生のシリアスさが台無しになるって思ってるらしいけど、そんなことは無い。笑いこそ生きる理由そのものなんだ。
次に第二次世界大戦の話
戦争中で空襲の話の悲惨さを聞くのは現在においても難しいことではない。東京大空襲などのB-29による爆撃の話は未だに語り継がれている。そのB-29なのであるが、その銀色の機体を思い起こすだけでも身震いする「悪魔の化身」と捉えるも人も多いそうである。
ある少年は自分の町が空襲で焼けていくのを避難した山の麓から見守りながら自分の頭上を悠然と去っていく銀色の悪魔を「美しい」と思ってしまったそうだ。もちろん自分の生まれた町を焼かれ、多くの知り合いが死んだのであるがそういったものとは別に、ただただ銀色のそれの美しさに魅入られていたそうだ。
実際、B-29はデザイン的にも評価が高く、第2次大戦の飛行機において最も美しいという人も多い機体だそうである。戦闘機と違いスタイリッシュなデザインではないが、その巨大な銀色の機体が超然と編隊を組んで上空を飛んでいくさまは見る人に大きな衝撃を与えることは間違いないだろう。
以下はネットのサイトから
それをばら撒くB29爆撃機は4発のプロペラ機で、実に美しい姿をしていた。今時のおどろおどろしいジェット機と違い、実に美しい銀翼を真横に広げて悠然と編隊を組んで進みながら、遠慮会釈無く火の玉をばら撒き続ける。日本の高射砲が届かない高さを、悠々と進む殺人者の群れを毎晩のように私は睨んでいた。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200608120943576
焼夷弾の雨の中を祖母の実家へ逃げたのである。
まるで赤い色紙に黒い飛行機の形を市松模様に並べたような、整然としたB29の編隊飛行の様子が見えたのを、幼心に美しいものだなあと見とれていた。
その下では、阿鼻叫喚の炎熱地獄が現出されていた。
http://www.fukuishimbun.co.jp/sengo60nen/toukou1.html
からくりサーカスからの話
さて、最後は「からくりサーカス」からの一コマ。故郷の村をたった一人の人形によって壊された人形遣いがその自分の肉親を殺した人形をみて「美しい」と感じてしまったと言う話である。家族殺しの仇なのに、たった一瞬ではあるが相手を「美しい」と思ってしまった。そんな自分が、許せなかったそうである。